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こちらは二次創作サイト兼お料理ブログとなっています。
CPはギャグ/日のケン藤です。

 オレの名前は藤田。今とあることで頭を抱えている。
 それは俺が親父から継いだ店「喫茶処藤田」の経営が全く上手く行かないってことだ。
 電気代がもったいないので日光しか差し込まない店内のテーブルに座り頭を抱えて伏せていた。
 経営がうまくいかない理由は分かっている。それはオレの料理の腕が全くなっていないという事だ。
 どうしてそうなってしまったかというと、先日、親父が夜逃げしたからだ。
 夜逃げって言うと聞こえが悪いからちゃんと説明するな。 
 別に借金とかじゃなくて、本当に店の経営から逃げたのだ。
 経営に困っていたわけでもない。ただ、本当に自分の料理は美味しいのかと常々疑問に持っていた人だから、プレッシャーに耐えられなくなったんだと思う。
 母さんは父さんがいなくなる数年前にそんな親父の性格が気に入らなくて離婚した。
 親の勝手な行動で困ったのがオレ。
 確かにいずれはこの店を継ぐ予定だったし異議もない。
 ただ急すぎたのだ。
 高校を卒業して、料理の専門学校に入る予定だった。
 入学金も払えないオレにとって料理学校の道を閉ざされてしまったので、こうやって店を一応経営してるけど、ホントに上達できない。
 第一メニューのレシピを教えてくれる人間もいないし、センスの欠片もないのだ。
 唯一作れるのはじいちゃんに教えてもらったトマトソースのスパゲティだけ。
 だからそれを食べに商店街の人たちが来てくれて、お情けで店がどうにかなっていると言うわけだ。

「おい、藤田。思い悩む暇があれば、何か新しいものでも作れよ。」

 店先の掃除をしていた親友のケンジ。
 ケンジも専門学校とかに行く予定だったのに、わざわざオレの為に学校行きをやめてフリーターをしながら店を手伝ってくれている。
 汚れた雑巾をバシンとオレに投げつけて「しんきくせぇ面すんな」と罵ってるのか励ましてるのかよくわからない言葉を浴びせてきた。

「はぁ~あ。こうさ、妖精とか出てきてオレの料理の腕前を何とかしてくんねぇかな?」

 オレは窓に飾られた四体の人形を見ながらつぶやいた。
 この人形は中華、お菓子、洋食、和食のコックをかたどった人形で、店を建てたときからあるらしい。

「あ、その顔もらい。」

 ケンジは携帯のカメラをオレに向けてパシャリと写真を撮った。

「もー。やめろよ。」

 ケンジは昔から変な趣味がある。
 携帯の写真でオレの写真を撮りまくる事だ。
 何でと聞いたら「今日の藤田を思い出して幸せに浸りながら寝る為」と真顔で言われた。
 
 それは本当に親友と思われているのかどうか疑わしき所があるが、この際気にしない。何をしようとケンジはケンジで、オレにとって大切な親友であることには変わりないから。
 そんな事を思っていると、携帯のディスプレイを見ていたケンジが眉根を寄せた。

「アレ?お前この人形ずらしたの?」
「え?何それ?オレが人形とかずらすわけないじゃん。」
「ほら、これ昨日のお前。」
 
 そう言ってケンジが見せてきたのは昨日窓枠を掃除しているときに取られた写真だった。
 写真の並びはお菓子、中華、和食、洋食である。
 しかし、今は先ほどのように中華、お菓子、洋食、和食と並んでいるのだ。

「ちょちょっちょ!待ってケンジが何かしたんだろ!?」
「いやいや。俺触ってないから。藤田以外そんな触らねぇから!」 
「え、おまえ何言ってんの!?」

 オレ達は顔を寄せて人形を見つめると、急にガタガタと人形が動き出したのだ。

「いやぁ!ポルタァガイスト!?」

 オレは思わずケンジに抱きつき、ケンジはオレの怖がる顔を写メっていた。
 何でこの状況で写真撮るんだよ。お前のが怖くなったよ。

 すると人形はポンポンとポップコーンがはじけるみたいにはじけ飛び、なんと小さな人へと姿を変えたのだ。

「怖がらせてすみません。」

 赤いスカーフのおかっぱの男の子が冷静にそう言い、他の人形たちもそれぞれに並んでオレの目の前に浮かんでいる。 
 何も言えないでいるオレ達の目の前で手を振って咳払いをした。

「僕たちはあの人形に宿った妖精です。」
「よ、妖精…?」
「はい。僕は妹子。洋食が大好きです。そしてこっちの臭いオッサンが太子です。」
洋食の妹子ちゃんは和食の服を着た太子さんを指差した。
「おまえ…別に私は臭くないぞ。私は太子。カレーと妹子が大好きだ。」
「変な誤解を招く言い方はやめてください。死んでください。」
「へこむ…」
 妹子の強烈な返答に太子さんはずんと肩を下げて膝に顔を埋めた。
 そして次にお菓子の子が頭を下げる。
「僕は鬼男です。角は本物なのであまり触らないでください。そしてこちらが閻魔大王です。」
「やぁ。藤田君。俺は閻魔。ちなみにこの写真は俺の誕生「聞き流してください。」
「はぁ…」

 突然出てきた妖精さん。
 それぞれに個性が豊かそうなオーラが出ている。
 赤いコックが妹子ちゃん。
 青い和食が太子さん。
 緑のパティシェが小鬼の鬼男君。
 黒い和服が中華料理の閻魔大王。
 である。
 
「なぁ。どうして急に動いたり、出てきたんだ?」
「それは、お腹がすいたからです。」
 妹子ちゃんが僕の目の前に飛んできて、お腹をさすった。

「僕たちはずっと人形としてこの喫茶店の料理の匂いを嗅いできました。それは僕たちの空腹を満たす手段でもあります。」
「でも、お前に経営変わったとたん、匂いはまずくて何にも食べてないんだよ。」
 
 妹子ちゃんはハァと深いため息をつき、太子さんはげっそりと肩を落とした。
 妖精も食えないほどオレはまずいものを作ってきたというわけだ。
 そこまで言われると自覚していたとは言えオレの方が凹むよ。

「で、でも僕は…」

 鬼男君がそれを取り繕うようにあわてて弁解してくれた。

「藤田君のトマトソースのスパゲティが好きですよ。」
「うん。あれは俺も好きだよ。」

 閻魔さんと鬼男君がそう言ってくれて唯一作れるそれをほめてもらえて少しだけ元気が出た。

「とりあえずさ、僕も太子も、鬼男君も大王も藤田のトマトソースは好きなわけ。だから食べさせてくれない?匂いだけでいいから。」
「は、はい。」

 まさかこんな展開で妖精さんにパスタを作る事になるなんて思わなかった。

「昼時だし、ケンジも食ってくだろ?」
「おう。」
「じゃぁ二人前のトマトソースパスタを作りたいと思います。」

 オレはエプロンをつけて腕まくり、早速調理に取りかかった。

準備するもの
トマト小5個 玉ねぎ1/2個 にんにく一欠 固形コンソメ1個



トマトからつくるオリジナルトマトソースだよ!
トマトによって酸っぱくなったり甘くなったりするよ!

まずお湯を温めておきます。
1
 湯むきをするのでトマトのお尻を十字に切ります。
 それを準備していたお湯に投入!
*薄皮がぺろんと浮いてめくれてくるよ。
 捲れる間に玉ねぎをみじん切りして電子レンジで加熱します。加熱の間、ニンニクをみじん切りにします。
!!切ってる間にトマトの皮が捲れたら先に火から降ろして水にさらしましょう!!
2

水に付けると皮がこんな風につるんと剥けます。
4
皮のめくれたトマト角切りにして準備はOKだ。
5
鍋にオリーブオイルを垂らし匂いが出るまでニンニクを炒め、玉ねぎを投入しまーす!
十分に炒められたら、トマトを入れます。

ぐつぐつしてきたら固形コンソメを入れて、ひと煮立ちさせるよ。
 焦げないようにたまにかき混ぜてあげてね。
塩とコショウで味を調えて出来上がり!
パスタと絡めれば手作りトマトソースパスタの完成です!

6

 オレはドキドキしながら彼らの前にパスタを置いた。

「どうかな?」
 
 彼らは一斉に匂いを嗅いで、ハァァと気持ちよさそうにため息を漏らした。

「これこれ!この匂い!」
「何杯でもいける。すごくおいしいぞ!」
「ホント!?ねぇ!ケンジ!オレ妖精に褒められちゃったよ!」

「ほかにも唐辛子やアンチョビを混ぜても味が広がるから、試してみてよ!」
「そうなの?ケンジ、やってみようぜ!」

 飛び跳ねて喜べば、ケンジはそうだなとにっこり笑ってくれた。
 誰かに食べてもらって、美味しいって言ってもらえるなんて、こんなに嬉しいんだ。

「ねぇ、藤田。」
 
 妹子に声をかけられて、オレは何?と首を傾げた。

「藤田はきっとやればできるよ。僕たちが協力して藤田にレシピを教えるから、それをメニューにしてみたら?」
「え!…でも…。俺に出来るかな?」
「大丈夫!絶対君なら出来るから。勿論ケンジも手伝ってあげてね。」
「俺も?藤田より出来ねぇぜ。」
「それ。その携帯で手順をカメラに収めれば思い出しながらでも作れるんじゃない?」

 妹子ちゃんはケンジの携帯に指を指した。

「まぁ、その前に店もきれいに掃除だな。」腰に手を当てた太子さんが店内を見回した。
「表のメニューのレプリカも取って違うものでも飾るといいよ。」
 古びたメニューのレプリカを指差す鬼男君。
 妖精たちは楽しそうにそれぞれの話を提案してくれる。
 その話を聞くだけでだんだんと楽しい気分になり、やる気が出てきた。

「あ…藤田が笑った。」

 いつもならすかさず携帯を構えるはずなのに、そう言ったケンジはボーっとしてオレを見つめた。

「オレ、そんなに笑ってなかった?」
「あぁ。店ついでから笑う所見てなかったから。でも妖精のおかげだな。俺も手伝うからさ、やってやろうぜ!こいつらのメニューで新しい店に仕立て直すんだ。」

 オレの為に、ケンジが動いてくれて、妖精さんまで手伝ってくれることになった。これのお礼はオレがこの店で一人前になる事だ。
 やらなければ。
 もしかしたら、有名になれば親父も母ちゃんも戻ってきてくれるかもしれない。

「ありがとう。オレ、がんばる。商店街で一番美味しい店になるくらい。」
「この際倭国1って言っとけよ。」
「えー無理無理。」

 オレの決意に、ケンジは肩に腕をかけて頭をゴリゴリと撫でてきた。
 久々に笑った。
 彼らとの出会いで、オレは変わる。

 全てを変える一歩にしてやる。
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